Works - 実例

サントリーはデジタルで新しい文化をつくる

“トップガン”で仕掛ける、
現場と経営をつなぐDX

サントリーコミュニケーションズ株式会社
2017年、サントリーグループの機能会社であるサントリーコミュニケーションズに、グループ全社のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の推進を掲げて、デジタルマーケティング本部は誕生しました。そして2020年4月、本部内にグループ各社と相対し、DX案件の創出や意識改革を進める、通称「トップガン・チーム」が立ち上がります。

NODEは、そのチーム立ち上げ時から参画し、グループ各社のDXの道筋の整理やチーム作りに貢献してきました。今回は、その推進役を担うデジタルマーケティング本部 部長の二ノ宮治之さんにお話をお聞きします。

聞き手:金 均(NODE)

サントリーの課題とDXの役割

金 均(以下、金) 二ノ宮さんはデジタルマーケティング本部には、2017年創設時に異動されてきたのですよね。

二ノ宮 治之氏(以下、二ノ宮) はい。私の経歴を簡単に申し上げますと、まず営業を約10年間。そのあと、営業推進とブランドマネージャーを経て、2017年からデジタルマーケティング本部です。

サントリーグループには、ビール会社、スピリッツ会社、食品会社など、事業ごとに事業会社がありまして、それを横串で貫く業務活動は、機能会社が担っています。
私の今いるサントリーコミュニケーションズは、マーケティングコミュニケーション業務を横串で貫く機能会社で、その中のデジタル部門として、デジタルマーケティング本部があります。

 世の中的には、サントリーさんは販促や広告がお強いのでサントリーコミュニケーションズと言えばそのイメージがあると思いますが、デジタルマーケティング本部は少し違ったミッションをお持ちですよね。

二ノ宮 そうですね。お客様コミュニケーションとしてのデジタルももちろん対応しますが、より求められているのは、「グループ全社のDXの推進」です。その背景は、大きく二つあります。

まずサントリーは今までにいろんなイノベーションを起こしてきた自負があります。1929年に初の国産ウイスキーを販売したり、直近ではハイボールブームを仕掛けたりと、文化をつくってきました。あるいは文化事業ではサントリーホールや美術館がありますし、スポーツ振興も行なっています。
そのような中、これからも会社がイノベーティブであろうとした時に、今後はデジタルを使ってイノベーションを起こしていく。それが我々に与えられた使命だろうということ。

もう一つは、昨今の環境の変化です。競合メーカーのみならず、小売流通の各社のプライベートブランド商品の展開で競争も激化しています。
また、メディアもどんどん細分化され、情報過多になり、お客様とコミュニケーションがしづらくなってきています。また、お客様の解像度を高めるための分析・調査も、人々のライフスタイルがどんどん多様化してその難易度が上がってきています。

そういった状況をデジタルの活用で突破できるのではないかという期待感が社内にはあります。

 とはいえ、今までモノづくりメーカーとしてサントリー様を成長させてきた方々からすると、DXは遠い概念と捉えられがちではないですか?

12年かけて一つのボトルをつくるような、本当に美味しいものをつくることに矜持をもって取り組まれてきたモノづくりと、デジタルを活用してアプリでお客様とつながっていくことの間には、なかなか埋まりにくいものがあるとも感じます。

二ノ宮 おっしゃる通りです。それが我々の悩みでもありましたし、今でも悩んでいます。

1本100円の飲料のために、一人一人のお客様の行動をみてデジタルコミュニケーションをつくりこんだところで非効率ですし、マスメディアの力が必要でしょう。
そうではなく、我々はお客様から得られるデジタルデータが、しっかりマーケティングに活かされるプロセスづくりをすることが肝心だと思っていて、今はそこへも舵を切って進めていこうと考えています。

 たしかに飲料100円、もしくは第三のビール150円という消費財の世界では、デジタルを活用して個別に販促をしたとしても、利益が圧迫されてしまうので、デジタル投資は肯定されにくいですよね。二ノ宮さんのマーケティングという言葉が指すのは、より広義な意味ですよね。

二ノ宮 はい。お客様への出口としてのECやSNSを用意するだけでなく、そこでつかんだお客様データを活用して、より深くお客様を理解し、より良い商品開発や体験づくりにどうフィードバックしていくのかを考えること。それこそが、DXによるマーケティングの進化と捉えています。

経営と現場をつなぎ、
戦略的にDX案件をつくる

 私から見ると、そういう概念を事業会社のソリューションとして初めて打ち立てたのが、二ノ宮さんが牽引するトップガンチームなのかなと思ったりもします。

消費財メーカーなので、シンプルに考えると「良いものをつくって、売って、飲んでいただく」、そのためのバリューチェーン。
だから、つくり手としては飲料がどういう場で買われて(買い場)、どういう場で飲まれたか(飲み場)が詳しく分かるほどいい。
「もっとこういう風にしたら消費者が手を伸ばしやすい飲料になるかもしれない」、「こんなお酒ならもっと楽しく飲んでもらえるかもしれない」というように、コミュニケーションや商品開発そのものを強くしていこう、という考え方ですね。

二ノ宮 はい。買い場や飲み場のデータを取るのはなかなか難しいのですが、そこまでいければもっとマーケティングが進化すると考え、バリューチェーン全体の変革を目指したいと思っています。

 ただ、その難易度は高いですよね。なぜならデータを取る側の部門には意味がなくて、受け取る側の部門はメリットがあるような、部門を越えた話になるので。

つまり、最初は宣伝部門のLINE広告などの案件から始まるのに、そこで取得したデータは、商品開発や営業といった別部門にもフィードバックしながら、全社をうまく回す大きな構造を作り上げていくのがお仕事になる。

二ノ宮 はい。なかなか難しい状況がありました。最初、そのように進めたら、予想以上に事業会社の理解が得られなかった。理屈では分かっていても、実感を伴わないのでリアリティに欠けると言いますか。
じゃあ、自分ごと化されやすいのはどこかなと思ったら、日々営業や宣伝、商品開発を考えている現場レベルだった。そこで2019年は結構現場へ行ったのですが、今度はそれだけだと上が理解しないという話になってくる。

 それで、2019年12月に私が参画し、数ヶ月ご一緒して、2020年4月にトップガンチームが形成された流れでしたね。

二ノ宮 はい。トップガンは、社内営業部隊の位置づけです。おそらくコンサル会社、あるいは広告代理店が近いのかなと思うのですが、事業会社の業務をただ請け負うのではなく、事業会社にあるべきDXの形をご提案し、一緒に変革の進め方を考えていくような営業です。

ただ、そういう組織を立ち上げた経験がサントリーにはなかったので、NODEの金さんにアドバイザリーとして参画いただき、どのようにチームを立ち上げていくのか、人材はどう育てていくのか、各事業会社とはどの向き合っていくかのストーリー作りをご支援いただきました。

 そうですね。会社を変えていくには、現場だけでなく、経営も変えていかなければいけない。
そして、どの会社にも、経営と現場をつなぐキーマンがいらっしゃると思いますが、いかにそのような人を発見して、事業会社とデジタルマーケティング本部が一体となって進めるような提案をするべきか、お伝えするところから始めたように思います。

二ノ宮 相手の期待に応えずに、こちらの理想論だけ掲げても誰も味方になってくれない。だから対面部署のキーマンの願いをまずは叶えることにとにかく集中して、そこから信頼を勝ち得て、そこから新たな種を見つけるというプロセスを見出すことができました。
そうして少しずつ実績ができ、事業会社との関係もより良いものになっていきました。

 それは良いサイクルですね。

二ノ宮 金さんにアドバイスをいただきながら、とにかく彼らの求めていることにミートした情報を提供することを頑張りました。向こうの課題や悩みごとが引き出せると、それを解決するソリューションはまだないけれど一緒に作り上げませんか、という話ができる。

まだ明確な成果は出ていないんですけれど、今までにアプローチできなかったルートが開拓できて、社内での意識変革もそこが旗振り役になって進んでいる感じです。

 狙い通りですね。
やはり現場は成果創出を目指すじゃないですか。だからまずは成果を出すしかない。ただそこで成果を出すと、「我が社全体として、デジタルをもっと使っていったほうがいいかも知れない」、という意識の変革につながっていく。
そうやって初めて全社が動いていくと思うんです。私は社内グロースハックと呼んでいますが、それを実践できる二ノ宮さんのチームは素晴らしいな、と思います。

スパイラルアップ型のPDCAで
全社の変革につなぐ

 ただ、現場で成果を出すだけでは意識は変わらないこともある。どうやってそこを突破しているんですか?

二ノ宮 難しいですが、我々が考えているのは、二つです。

まず現場からしっかりとその組織の旗振り役に答申してもらうこと。
つまり、例えばチームとしての成果をチームの長だけではなく、事業会社の社長レベルへもしっかり答申してもらう。今までは、「これはまだ社長に言うレベルの話じゃないよ」、という遠慮があったのですけれど、今は現場の手応えが高まってきていて、今後そういう場面も増えてくるのではないかと思っています。

 二ノ宮さんのおっしゃるのはスパイラルアップ型のPDCAですね。小さく実験して、これでうまくいったら、次はこういう風になりますよと先に広がっていく。
だから社長に話す時も、現場の小さな成果が最終的に大きく積み上がっていく未来が描けて、「これは経営へのインパクトが大きいんじゃないですか?」みたいな話ができるようになったのかも知れませんね。では、もう一つは?

二ノ宮 やっぱり、旗振り役への直接のアプローチですね。

 決定権がある人に直接アカウントをしにいく。

二ノ宮 我々から直接上層部に提案して「いいぞ」という返事がもらえるとすると、より旗振りの機能が進んでいくとは考えています。

 じゃあ、現場と上層部の両方のルートでアプローチをかけながら、事業会社全体の経営層の信頼を勝ち得てきたということなんですね。

二ノ宮 勝ち得られたかは分からないですけれど、関係性は良くなっていると思います。

経営と現場を複眼で捉える
DX人材をいかに育成するか

 実際、かなり難しい話をされていますよね。だってデジタルに詳しくないと、さすがに個別のソリューションでも現場で成果は出せないじゃないですか。

つまり、現場で成果が出せて、それを経営にも話せて、経営陣から違った角度の話がきても捉えられる部隊が必要。
それを貴社ではトップガンと呼んで人材育成してきたのだと思うのですが、育ってきた感覚はありますか?

二ノ宮 これは最近、私が嬉しかった話なのですが、事業会社の社長をこちらの課長以上で囲んだミーティングがあって、終わった後にそれに対して1メンバーから「あの話、どんな反応だったんですか?」という質問が出てきたんです。
メンバーレベルでも、現場のプロジェクトの話だけでなく、経営層の考えを理解して、全社の変革につながるかどうか考えられるようになった。

 メンバーの皆さん、すごいですよね。

二ノ宮 マネージャーもメンバーもすごく高度なことを飄々とやってくれています。
今回、我々のチームが始めたことは、クライアントに寄り添って課題を引き出し、案件にしていくコンサルティングに近い仕事だと思うのです。こういう仕事はサントリーの中で取り組んだことがない中で、その姿勢をNODEさんから学べたことは大きかったです。

 ありがとうございます。私も、NODEというファームを起業したわけですが、サントリー様のトップガンチームの立上げは、言ってみればDXに特化した社内コンサルファームの創業。私の持つ経営ノウハウを余すところなくご提供したつもりです。

二ノ宮 おかげさまで、メンバーの意識は大きく変わりました。
私も2017年にデジタルマーケティング本部にやってきた時は、現場を支援して価値を出すんだという意識でやっていました。けれど今は、我々のミッションとしてDXにつながる案件をつくるんだ、そのプロセスで意識を変えていこうというのが、マネージャー、メンバーにまで息づいています。

 大変革ですね。

二ノ宮 はい、今のメンバーには、好奇心を持ってアンテナを自ら張り、知見を貪欲に吸収する、そういう向上心を感じます。

これまでだと相対する部門に対して、「課題は何ですか?」と聞いてしまっていたのですが、今は聞く前に、自分はどこまで事業会社の身になって真の課題を考えられるのか、また、一緒に課題から考えたと思ってもらえるのか、そんな風に仕事のとらえ方が変わってきました。

 素晴らしいですね。皆さんが求めるDX人材は、まだ誰も解いたことがない問題に挑み、新たなソリューションを生み出す人材。
だからこそ、通常の人材育成とは違い、学習の場以上に、メンバーのモチベーションを高めて、新しい案件に挑んでいくディレクションが重要だと私は考えています。その結果、能力が開花する。

言ってみれば、DX人材育成の鍵は、DXに挑戦する人材が集い、知恵を共有し、実際の案件の中で励まし合いながら成長していく場づくりだと思っています。

二ノ宮 まさにそこを一緒に実践いただいて、皆の心の支えというか、メンターになっていただけて感謝しています。そういう仕事のしかたに触れることで、「案件が大きな種で、これから実を結ぶのであれば、多少難易度が高くとも拾いにいって、大きな花を咲かせましょう」という活動を、プライドを持ってできるようになってきています。

 あとは外部の人材として、射場さん(IBAカンパニー代表/元日本コカコーラ社副社長)や他にも何名かご紹介しました。

二ノ宮 はい、おかげさまでトップガンメンバーは、社内だけでなく、社外の知見も吸収し、事業会社に提案ができるようになっています。

射場さんとはいろんなやり取りをしてリサーチもいただきました。そのアウトプットの質が素晴らしかったし、射場さんがこの仕事を楽しんでくださって、私自身すごく楽しくお仕事をさせてもらいました。それがあのアウトプットの質と量に繋がったんじゃないかなと思います。

今後の挑戦、
そしてDX推進者へのエール

 チームで今後、挑戦していこうと思っていることはどんなことですか?

二ノ宮 二つあります。一つ目は、「お客様起点」で便益を与えることに取り組んでいきたいなと。その観点でのデジタルの活用を探り当てて、グループに貢献できるようになりたいと思っています。

 事業会社はメーカーなので、モノづくりがアイデンティティ。そうすると、“モノからコトへ”と言われても最後はやはりモノ起点です。
そこにデータをお客様の理解に捉え直したデジタルマーケティング本部が、新しい基軸を打ち出していくってことでしょうか?

二ノ宮 そうですね。関連する事業会社にこちらから提案し、新しいコト体験につながるサービスを打ち出していきたいです。

そして二つ目は、「DXの当たり前化」です。
お恥ずかしながら、単純にデジタルツールを使うことをDXと言っている人間も社内にはまだ多くいるのですが、そのような状態から、いつの間にかDXが当たり前になっている世界にしていきたい。その時にはもしかしたら我々の部署は解散しているのかもしれないですけれど。

 DXの本質は変革で、トップガンは変革推進チームだから、その変革が終わったら発展的解散というか、事業会社と融合していくのかもしれないですよね。

二ノ宮 とは言いながら、デジタルの世界はどんどん進化していくし、終わりはないとも思っているのですけれど、そういう世界を目指してというところですね。

 では、最後にもう一つ。他の会社で同じような立場にいる変革者たちにエールをお願いできませんか。

二ノ宮 当社の佐治会長が使う言葉なのですが、「へこたれず、あきらめず、しつこく」やっていくことかなと思っています。これは精神論的なエールになってしまうのですけれど。

ただ、世の中は我々が思っている以上に変革してきているとも思っています。例えば我々のお得意先の飲食店さんも、このコロナを機に一気に変革して、デジタルツールも完備されていますし。
そんな風にこれからDXが当たり前になった世界では、お客様はさらに便利で楽しい世界が享受できる。もっと先を見据えると、もっとワクワクできることがあるのではないかと思っています。

 ただのデータ連携だと人間味がないし、まだお客様にとって便利で新しい文化を生んでいる感じではないですよね。
例えば面白いことを考えている飲食店の方と二ノ宮さんがお互いに腹を割って話して、人間とデータとがネットワークされて、新しい飲み物文化が作られていくとサントリーさんらしいなって思います。

二ノ宮 世の中を変えていくことができる仕事だと思うのです。
社内ではDXは機能的な側面で捉えられているかもしれないですが、誇りを持って世の中を変えていく意識を持つと、違う視点で取り組んでいけるはずです。

 例えばBAR文化はサントリーさんが作ってきた文化じゃないですか。そんな風に、コロナ禍の中で新しい飲み方をつくっていく。そう思うと、確かに世の中を変えるかもしれないですね。

二ノ宮 今すぐには会社への貢献が数字には表れないですが、DXへの取組みは世の中にも貢献していくと考えると、それを先駆けてやることがより企業価値を高めていくことにもなると思っています。
これからも、そのような取組みでお客様に価値を還元できる会社であり続けていきたいと思っています。

二ノ宮 治之
サントリーコミュニケーションズ株式会社
デジタルマーケティング本部 部長

1975年京都府生まれ。神戸大学法学部卒業後、1998年にサントリー入社。営業を約10年経験した後、営業推進、ブランドマネージャーを担当。「-196℃ストロングゼロ」を仕掛けるなどチューハイ市場の需要活性化に貢献。2017年よりデジタルマーケティング本部所属。日本ソムリエ協会認定のソムリエの資格を持つ。

取材・文・編集/丸山央里絵(Funday) 写真/雨森希紀(Maran.Don) デザイン/吉川 渉
  • DX人材育成
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)
  • 変革組織プランニング
  • 戦略構想
  • 変革リーダーシップ
  • ベンダーとの共創マネジメント
  • メーカーとの共創マネジメント

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