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INTERVIEW

企業変革のために、人の「NODE」をつなぐ流儀

NODE代表取締役 金 均(こん ひとし)

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  • NODE2020年1月10日
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成果を残す。その過程に、日の目を見ない努力の数々がある。例えば、テクノロジーの進化に合わせて、足を使った仕事が評価されづらくなるような状況に、どう折り合いをつけるのか。これまで貢献してきた価値をこれから貢献していく原動力と結ぶことができるなら、ゼロに戻らず企業変革を推進していける。
その方法論とコミュニケーションで、新たな市場を開発していくのがNODE代表である、金 均(こんひとし)の仕事です。

努力の行方を見つめる目

Qもしも生まれ変わったら何を仕事にしたいですか?

コックさん、ですね。人間は美味しいものを食べると、元気になる。私が知る限り、万人がそうです。身体に直接作用をし、それで気持ち的にも元気になれるもの。それが食べ物です。

『信長のシェフ』という漫画を読めば、食のシビアな面も理解できます。その漫画では、現代からタイムスリップしてきたコックが信長に食事を振る舞います。そして、信長にとって重要な局面ほどシェフの食事が必要とされます。信長は武田信玄のような武将とやりとりする一方で、農民ともやりとりしながら、さまざまな人間関係とシチュエーションに合わせて、シェフに最良の食事を求めるんです。

決して、容易なことじゃありません。その食事が原因でやりとりが破綻してしまったら、シェフ自身が命を失う可能性があるんですから。それでも、関わる人たちの心の裏まで深読みして、信長と他者の心のひだが溶け合い、最良の関係をもたらすために、コミュニケーションとしての食事を振る舞っていく。時は戦国時代です。誰が味方で誰が敵かもわからないシチュエーションで、人々の心を楽しませ、食べ物によって絆をつないでいけるのがコックという職業だと思いました。

Q顧客と話す際、そのシェフのように心の奥の気持ちまで踏み込むことはありますか?

常に意識しています。それは、皆の努力を無駄にしたくないからです。

コンサルティングファームあがりの私は以前、企業における企画立案という仕事について考えました。コンサルの仕事は最終的に50ページくらいの報告書をまとめて納品することですが、その50枚をまとめる過程ではいろんな検討会が開かれていて、知る限りでも90%程度の資料がボツになっています。そして、その90%の中には、コンサルティングファームで身を立てようと頑張っている若者たちが徹夜を続けた結果があって、「10枚書いた内の1枚が生き残った」というような一喜一憂をしていたりもします。でも、500枚もつくって、50枚しか残せないのか、という話でもあると思うんですね。

同じように、漫画家や作家のような創作者のつくるものもすごい勢いで捨てられている。もちろん、推敲という良い創作過程で捨てられていくものもある。一方で、スポンサーや取引関係という創作とは関係のない領域で捨てられてしまうものも多くあると聞いています。

そして、どの企業でも同じようなことは起きていて、「私は経理の立場から話しているんです」とか、「営業部長には文句が言えないから」とか、企画や創作の本質とは異なる理由で、せっかくの提案がボツになったり、内容を丸められてしまうことがあります。スポンサード構造や組織関係を理由に、結局、何も生まれない世界があるんですね。

そんな状況に、どんな関わり方をしようかと、私は考えるようになりました。そして、結果として経営者だろうと創作者だろうとオペレーターだろうと、立場を抜きにして、「あなたは何をしたいんですか?」という人と人とのコミュニケーションを貫くことに決めたんです。

既存と新規。両事業をつなぐ「人」という架け橋

Q組織やスポンサード構造による軋轢は、なぜ生まれるんでしょう?

例えば、新規事業と既存事業が融合していく場合に、新規事業の座標軸が重要性を増していくと、KPIや人事評価指標などが変化してしまうからです。これまでは足で稼ぐ営業が偉かったけれど、デジタル技術を駆使してデータで稼ぐ営業に変わっていくとしたら、営業のトップはしがらみと向き合うことになります。「あいつはあの時頑張っても昇格できなかったから次のタイミングで。そう約束しちゃっている」といった関係性が壊れてしまうので、ボツと言い渡してしまう。

とはいえ、新規事業部長は社命だからやるしかないし、社長も会社を成長させるならその両方が拮抗することは仕方ないと思っている。私はそういう状況を全部見ていて、一人ひとりの生き様がよくわかるんです。だとしたら、「この部分は歩み寄れるんじゃないですか? 残りの部分は時間が経ってからお互いに考えましょう」という役回りをやりたいと思いました。

新規事業の人たちが新しいことに「いいね!」を付けるミーティングをしている一方で、営業の人は「足で稼いで、頑張ろうぜ」とマインドを肯定していて、社長は両方をマネージメントするために、ときに副社長へ相談を持ちかける、といったように世界は多面的です。人それぞれ立場は異なっても、私は“邪悪な心を持っていなければ人の行ないは全部正しい”と思っているんです。

ただ、言語で説明するだけでは、それぞれの正しさを全員で理解し合うことはできないとも思っています。結局、人は言葉だけでは理解しあえない。だから、皆が相互理解し、一緒に協力できる場をつくっていくことが必要だと思っています。

Q顧客の多面的な社内関係をつなぎ、変革の推進を後押しするために、金さんは何をしますか?

筋書きを描きます。この企業はこうやったらもっと面白くなるという内容を顧客に渡し、実行に移せるとなったら、NODEの活きの良いメンバーを連れていったり、「その筋書き、面白い。私もやりたい!」って人が集まってこないかと期待したり。筋書きに余白をいっぱい残しておくと、みんながアドリブできるようになるから、私の想像を超えた面白いものができるかもしれません。

筋書きを舞台に喩えるなら、私はあくまでシーンのアブストラクトだけを描いているんです。最初のシーンでは、営業部長と新規事業部長が出会う。その際のコンセプトやキーポイントを挙げたから、あとはみんなで考えてみよう、というように。「私のイメージでは、こういう流れで進展すると思います。でも、やるかやらないかは自由でいいんですよ」と伝えると、「最後のほうのシーンはまだわからないけど、まずは最初のシーンをはじめてみるか」って、ちょっとずつ動いていくんです。

動き出したら、私は「営業部長さんが話に乗ってきてくれましたよ!」「新規事業部長さんもいらしてください!」って盛り上げ役をして、話が進むごとに喧嘩や笑い合うことが起きる。そんな中で新しくベンダーが入ってきて難しい話をされると、「難しいけど、良いことおっしゃってます。もう少し噛み砕いて!」って伝える一方で、顧客には、「難しかったけど勉強になりましたね。この意見を取り入れてみましょう!」って伝えていきます。

そうしていると、「金さんと仕事をするのは楽しい」って言ってもらえるようにもなって、それをどんどん大きくしていく。その過程で、場や人が良い方向へ変わっていったりもするんです。

人が人を想う社会に向けて

Q人の心をつかんで、企業が変革していく支援をしているんですね。この仕事をするようになった理由は?

何だろうな。“人が人を思う社会”を実現したいのかな。
企業がお客さんにとって本当に良いと思うものを売るだとか、良いサービスにするだとか、それだけじゃなくて。新規事業の人たちのやるせなさを営業の人たちも理解したほうがいいと思うし、社長にもそう思う。現場の社員も、部長とわかり合ったほうがいいと思うし。人の思いが連綿とつながっている構造体をつくりたいんです。

それは、人は自分の仕事を誰かに認めてもらいたいと思っているし、喜んでもらいたいと思っているって考えが源泉にあるからです。みんなが寄り集まって、その方向で未来に進もうと決めたことは良いものでしょう。とにかく生きているんだから、「前に進もうぜ」って思っています。

だから社会の人全員に問いたいんですよ。「あなたは、立場で仕事をしているんですか? それとも、あなた自身で仕事をしているんですか?」って。

自由を、さもなくば死を

Q仕事をする上で、心に刻んでいることはありますか?

フランス革命の末期に、労働者たちが自由をもとめてパリ・コミューンを起こすのですが、そのときに「プルードン派」という人たちがこういうことを言っていたのですね。

“マルクスの「人間による生産を、経済的生産に還元する知的態度」に終止符を打つべきである。人間による生産は「作品(心)」を内包する。そして経済活動は、物質的・技術的連鎖だけでなく、作品(心)でつながっていく祭りである。その活動の礎は、権威ではなく、友愛のネットワークである。実践を理論に、知識を真理に、個々が自由と全体を持った共同体として生きよう。” ※1

私は、いつも心に、この言葉を刻んでいます。

現代も、仕事は“お金のため”と思っている人が多いと思いますが、プルードン派はそうはいわないんですね。仕事は、もちろん“経済的生産”のためだけれど、同時に“作品を作り、そこに込めた心をやり取りする友愛のネットワークでもあるんだ”というわけです。例えば、レンガ職人であっても、ただレンガを作っているだけではない。一生懸命レンガをつくる中で、もっと固いレンガはできないかなとか、あの人はどういうレンガだと喜んでくれるかなとか、そういったことに思いを馳せながら仕事をしているのであって、ただお金のためだけではない、というのです。
そして、そんな心のやり取りを、商品という物に込めて、その思いをやり取りするのが経済であるのだから、人をただの労働力とみなすだけの社会なんていらない、といって蜂起するわけです。

残念なことに、パリ・コミューンは3カ月も持たずに、武力で鎮圧されてしまうのですが、彼らの思いは切実だと思います。

私は、彼らの思いを、物質社会から情報化社会に切り替わる今こそ、実現したいんです。
人が人生の大半を仕事に費やす中で、そこに自由に思いを込められない人生なんて、半分は死んでいるも同然じゃないかと、私も思ってしまいます。せっかく仕事をするのだから“WORK”という言葉を、「仕事」という意味だけでなく、「作品」とも読み替えて生きていきたい。皆で本当に良い“作品”を創り、その“作品づくり”を通じて友愛のネットワークを築いていく、そんな仕事をしていきたいと思っています。

※1[引用:H.ルフェーヴル著、河野健二、柴田朝子、西川長夫訳『パリ・コミューン』(岩波書店、岩波文庫2011年刊)]

金 均(Hitoshi Kon)

1977年、福岡県生まれ。東京大学工学部機械工学科を卒業し、大手コンサルタント会社に新卒入社。独立や転職を経験しながら、戦略的アライアンス、事業変革推進を担当。2019年4月、「人の笑顔を生み出す、新たなソリューションを生み出し続ける」ことをモットーに、株式会社NODEを創業。無政府的でありながら協調的な、世界のオープンノードを目指す。将来の夢は、エンターテイメント進出と、サウナ・温泉の経営。一児の父でもある。

取材・文/新井作文店 写真/雨森希紀 スタイリング/押木香代子 ヘアメイク/江頭亮子 デザイン/吉川 渉 構成・ディレクション/丸山央里絵

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  • NODE2020年4月27日
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